この記事では、「A watched pot never boils」(見ている鍋は煮えない)ということわざを数理モデルで表現することを試みました。
まず、このことわざの意味を説明し、それを数学的に定式化する方法を考察しました。
具体的には、人が何かを待つときに感じる主観的な時間の遅れを、指数関数や線形モデルを用いて表現し、Python によるシミュレーションで視覚化しました。
Watching a kettle never boilsの意味
“Watching a kettle never boils” は、実際のことわざ”A watched pot never boils”(見ている鍋は煮えない)の誤りです。
意味:
「じっと見ていると時間が遅く感じられ、待っているものがなかなか来ないように思える」ということを表します。特に、何かを心待ちにしているときや焦っているときに、進展が遅く感じられることを指します。
例:
- 試験の結果をずっと気にしていると、時間が経つのが遅く感じる。
- 料理が早くできてほしいと鍋をじっと見ていると、余計に長く感じる。
要するに、「気にしすぎると時間が長く感じられるから、気をそらしたほうがいいよ」という教訓のことわざです。
数理モデルの構築
“A watched pot never boils”(見ている鍋は煮えない)を数理モデルで表すには、「主観的な時間の流れ」と「期待に対する時間の認識の変化」を考える必要があります。
1. 主観的な時間の遅れ
人間の主観的な時間は、実際の時間
に対して、注意の集中度
に影響を受けると仮定します。
一般的に、注意が高いほど時間は長く感じられるため、次のような関係を考えます:
ここで、
は主観的な経過時間
は実際の経過時間
は注意の集中度(0 から 1 の範囲)
は時間認識の補正関数で、単調増加関数とする(例えば指数関数など)
一般的な心理学研究では、Weber-Fechnerの法則や心理時間スケーリングに基づき<は正の定数)などがよく使われます。
したがって、
となり、注意の集中度が高い(ずっと見ている状態)と、主観的な時間が長く感じられることを示します。
2. 期待値と時間認識
人が期待する「沸騰までの時間」をとし、実際の沸騰時間を
とすると、期待の強さは次のように変化すると仮定できます:
ここで、は注意の集中度
に対する関数で、
となるべきです。例えば、
は正の定数)
この場合、
となり、注意 が大きいほど、主観的に待たされている時間が長く感じられることを意味します。
結論
「じっと見ていると時間が長く感じる」という現象は、
- 主観的な時間の経過が注意の集中度によって指数的に引き延ばされること
- 期待する時間が注意の集中度に比例して増えることによって説明できます。
この数理モデルによって、「鍋を見つめていると、主観的には実際よりも長く待たされているように感じる」という現象を定量的に記述することができます。
例題
問題:ある鍋が実際には5 分で沸騰するとする。
しかし、注意の集中度が高いと、主観的な時間は長く感じられる。
注意の集中度を 0 から 1の範囲で変化させたとき、主観的な経過時間
を求め、プロットせよ。
また、期待時間も同様に計算し、グラフに描画せよ。
仮定する数式:
ここで、
(実際の沸騰時間)
(注意が増すほど主観的な時間が指数的に増加)
(期待時間が注意に応じて増加)
Pythonコード
以下のコードでは、注意の集中度を 0 から 1 まで変化させたときの 主観的な時間
と 期待時間 を計算し、プロットします。
このコードを実行すると、
- 赤線: 主観的に感じる時間 は、注意 が増えるほど指数的に増加する
- 青の点線: 期待時間は、注意 に対して線形に増加する
このように「ずっと見ていると時間が長く感じる」という現象が数理モデルとグラフで表現できます!
import numpy as np import matplotlib.pyplot as plt # パラメータ設定 T_r = 5 # 実際の沸騰時間(分) k = 1.2 # 主観的時間の指数成長係数 alpha = 1.5 # 期待時間の線形係数 # 注意の集中度 A を 0 から 1 まで 100 点で計算 A = np.linspace(0, 1, 100) # 主観的な時間 Ts の計算 T_s = T_r * np.exp(k * A) # 期待時間 E(T) の計算 E_T = T_r * (1 + alpha * A) # グラフの描画 plt.figure(figsize=(8, 5)) plt.plot(A, T_s, label='主観的な時間 Ts', color='r') plt.plot(A, E_T, label='期待時間 E(T)', color='b', linestyle='dashed') plt.xlabel('注意の集中度 A') plt.ylabel('時間(分)') plt.title('主観的な時間と期待時間の変化') plt.legend() plt.grid() plt.show()
以下に上記のコードを実行した結果のグラフを表示します。
例えば注意の集中度Aが0.4の場合、やかんが沸くまでの主観的な時間は8分。
集中度Aが1.0の場合は、なんと16分以上に感じられることを表しています。
まとめ
最終的に、注意の集中度が高いほど主観的な時間が指数的に増加し、期待時間も線形的に増加することを確認しました。
この結果は、「何かをじっと見つめていると時間が長く感じる」という心理現象を数理モデルで説明するものです。
Python を用いたシミュレーションにより、視覚的にも理解しやすい形でこの現象を捉えることができました。
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