国債はなぜ発行されるのか、国債と何なのかについてのまとめ

経済
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「国債とは何か」という問いについて自分なりに考えたことについての、まとめを書いてみます。

現代日本において国債の発行とは、一般的に国の借金と誤解されています。

さらに、一部の経済学者やメディアは、国債発行するという言葉を聞くだけで「これ以上国の借金を増やすのか」などと姦しく騒ぎ立て国民の不安をあおってきました。

しかし、現在進行中の新型コロナ禍において、これほど国債発行についての議論が高まったことはかつてありません。

そこで、国債とは何か、そして国債を発行することの意義とはいったい何なのかについて考えたことをまとめてみたいと思います。

金融的な意味での国債

一般的な意味での国債とは、国、すなわち政府が発行する貨幣(有価証券)であり、一般的に借用証書として知られています。

国債についての金融的な説明は様々な金融機関が説明していますが、その中でも最もわかりやすく正確な説明に近いのがSMBC日興証券の説明ではないでしょうか。

一部を抜粋すると、

国債とは、国(政府)が発行する債券のことです。
日本の国債は、政府の歳出の財源を確保するため、法律で定められた発行根拠に基づいて発行されています。

つまり、国(政府)が政策に基づいた財源を確保するために発行する債券です。

また財務省のホームページでも国債について解説されていますね。

国債とは国の発行する債券です。国債の発行は、法律で定められた発行根拠に基づいて行われており、大別すると普通国債と財政投融資特別会計国債(財投債)に区分されます。なお、普通国債と財投債は一体として発行されており、金融商品としては全く同じものです。

財務省のホームページではさらに細かい説明が続きますので興味ある方はご覧になってください。

経済的な意味での国債

では経済的な意味で国債とは何かを考えてみましょう。

と、その前に、国債の経済的な意味を理解するために知っておく必要があることが二つあります。

それらは、

  • 貨幣には様々な種類がある
  • 貨幣は借金によって生み出され、返済によって消滅する。

簡単に解説してみましょう。

貨幣には様々な種類がある

貨幣とは何かといわれて思い浮かぶものはというと、普通は現金ですよね。

しかし、実は貨幣には様々な種類があるということはあまり知られていません。

実際はお金の種類は、マクロ的に見ても少なくとも4種類あるわけです。

それらは、

  1. 政府発行の硬貨
  2. 日銀発行の紙幣
  3. 日銀当座預金といわれる日銀預け金
  4. 銀行の預金残高といわれるマネーストック

そしてこれらのうち、1+2+3の合計がマネタリーベースといわれます。

そしてこれら以外にも、小切手や社債や地方債も貨幣といっていいでしょう。

では国債はどうなのかというと、国債も貨幣といえます

国債は政府が発行する貨幣であり、唯一金融資産の担保を必要としない貨幣なのです。

つまり政府が発行する気になれば、いつでも発行できるのが国債という貨幣といえます。

貨幣は借金によって生み出され、返済によって消滅する。

一見何を言っているのか混乱しますが、実は結構単純です。

まず個人が借金をする場合を考えてみましょう。

個人が借金をする場合の手順として、

  1. まず銀行に借用証書を差し入れます。
  2. 個人の信用に基づいて、預金通帳に借入額が記帳されます。
  3. 銀行にとっては負債であり、借入人にとっては資産である預金通貨が発生します。
  4. 返済が済めば借入金(預金通貨)が消滅しますね。

会社が銀行から借金する手順も同じですね。

  1. まず銀行に借用証書を差し入れます。
  2. 会社の信用に基づいて、預金通帳に借入額が記帳されます。
  3. バランスシートの左側には資産が増え、右側には負債が増えます。
  4. 返済が済めば、左側の資産も右側の負債も消滅

では国が国債を発行した場合はどうなるか。

この部分は、中野剛志氏の富国と強兵―地政経済学序説の102ページから抜粋し、三橋貴明氏の解説を交えて説明(※印:三橋氏)していきます。

(1) 政府が国債を発行し銀行が購入すると、銀行保有の日銀当座預金は、政府の日銀当座預金勘定に振り替えられる。※政府は国債を発行し、現金紙幣ではなく、日銀当座預金残高を「借りる」という話です。

(2) 政府は財政出動の際に、請負企業に政府小切手で代金を支払う※政府は日銀当座預金を担保に、「政府小切手」を発行するのです。

(3)企業は政府小切手を銀行に持ち込み、「政府からの取り立て」を要求する。

(4)政府小切手を受け取った銀行は、相当する金額を企業の預金口座に記帳すると同時に、代金の取り立てを日銀に依頼。※この時点で新たな民間預金が増え、マネーストックが拡大します。

(5)日銀は、「政府保有の日銀当座預金」の該当額を、「銀行保有の日銀当座預金」に振り替える

(6)銀行は、戻ってきた日銀当座預金で、再び国債を購入することができる

つまり、

  1. 政府の国債発行により、政府の負債が増えると同時に、日銀当座預金が増える。
  2. 公共事業などの財政出動により業者に日銀当座預金担保の政府小切手で代金が支払われる。
  3. 政府小切手が銀行に持ち込まれると、業者の口座に記帳(民間預金の増加)。
  4. 日銀は政府保有の日銀当座預金を銀行保有の日銀当座預金に振り替える。

バランスシートで説明すると、政府が右側の負債を拡大させることで、左側の民間資産が増えることになります。

しかし、政府が右側の負債を消そうとした場合、当然左側の国民資産も消えてしまいますよね。

もっと簡単に言うと、誰かの負債は誰かの資産、誰かの資産は誰かの負債なので、政府が負債を増やしてくれることで私たちの預金が増えるということになります。

参考資料:

筑波大学:マクロ経済学の基礎

国債の意義について

国債の意義とは何かについて中野剛志氏はその著書「保守とは何だろうか (NHK出版新書)」の中で、イギリスの天才経済学者コールリッジの言葉を用いて、以下のように説明しています。

国債こそが、我が国の政治的な強さと環境的な繁栄のために、国家のあらゆる利益、地主階級と商業階級、独立した資産家と活動的な商人や悠々自適な年金受給者とを、分かちがたく結びつける。(p. 79-81)

さらには「マネタリーベースつまり金融部門の不活動貨幣をマネーストックつまり産業部門へ移転し、階級を超えて国民経済全体の所得を増やすことができる」と述べているのです。

国民の所得が増えることで需要牽引型のインフレを喚起、その需要に応えるために国内生産を増やし経済活動を促進させさらに所得が増えるという、好循環が生まれるのです。

国民統合の重要性

コールリッジの時代になぜイギリスが、発達した金融システムを持ちえた理由は、中野剛志氏によると、

階級や地域の違いを超えて、国民がより強固に統合されていたからだ。(p. 81)

国民のために資源の再配分を行うには、国民の統合が必要となります。

国民統合がなされていなければ、つまり、地域や階級などの違いを超えて共有される国民として同朋意識があればこそ、隣の困った人を「同じ国民だから助けよう」という気になるでしょう。

例えば、東日本大震災後の復興増税などは同朋意識の典型と言えるでしょう。

同じ国民であるからこそ、本来は政府の国債発行で済むものを、まったく必要のない増税という形で受け入れたのは国民意識の強さの表れといえます。

金融緩和だけでは機能しない

金融緩和とは何かについて、多くの金融機関が説明しています。

ちなみに下記の引用はSMBC日興証券からの引用です。

金融緩和とは、中央銀行が景気浮揚を促すために実施する金融政策を指します。景気悪化の局面で政策金利を引き下げたり、資金供給量を増やしたりすることによって、投資や消費などの経済活動を促します。なお、市場金利が0%近くまで低下し、政策金利の引き下げが難しい場合には、マイナス金利や量的緩和などの方法が取られることもあります。

ニュースなどでよく聞くのが、金利の引き下げやマイナス金利の実施、量的緩和などですが、これらの政策は、景気が低迷する日本で継続して行われた政策。

しかし日本の景気は上向くどころか、世界最低水準まで落ち込んでいるのです。

それもそのはずで、金融政策は財政政策と対になって行われなければならないのです。

というのも金利の引き下げやマイナス金利は民間が金を借りて投資しようとするときに、お金を借りやすいようにする政策。

つまり、民間が「投資をすればもうけが出る」と考えなければ、いくら金利を下げてもマイナス金利にしても、お金を借りてくれることはありません。

量的緩和も日銀当座預金を増やしただけで、民間へは資金が回らず経済効果はそれほどありませんでした。

つまり国債を発行し民間の需要を喚起することなくして、金融政策に効果は見られないのです。

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コールリッジの言葉を借りれば、

金融緩和は、あくまでも貨幣の供給量を増やす政策であって、貨幣の流通経路を作る政策ではない。

貯水地の水の量を増やすだけでは、水は園内をめぐって流れない…そうしたいのであれば、水を循環させるための水路を作らなければならない。つまり財政政策が必要にあるということだ。(P. 84: 保守とは何だろうか (NHK出版新書))

まとめ

一つの言葉に受け取り方によって様々な意味があるように、国債一つとっても金融的な意味や経済的な意味といったように、様々な意味があります。

しかし本来国債とは、経済環境を構築するための重要な一部であるにも関わらず、金融商品の一部としてしかみられていないように思います。

また、国債は借金であるという虚偽の一面のみが信じられるようになり、本来意義について一部の経済学者や言論人以外には深く論じられることはありませんでした。

しかし新型コロナによる世界の変化によって、国債の意義とそれを積極的に用いた財政出動への関心が高まってきているのです。

そして国債を発行する意義とは、国民の統合をより強固にし、迫りくる困難へと立ち向かうための後押しになるのではないかと考えるのです。

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