インフレとデフレ、実際のところどっちがいいのでしょうか?
私たちにとって世の中がインフレなのかデフレなのかをしっかり把握し、どのような対策をとるべきかを知ることは本当に豊かになるために必要です。
さらにそれだけではなく、私たち自身の命にもかかわることではないでしょうか。
そこで、私たちが豊かになるために、そして自分自身を守るために、インフレとデフレはどう違うのか、どちらを目指すべきなのか下のポイントに沿って考えてみたいと思います。
- インフレとは?そのメリット・デメリット
- デフレとは?そのメリット・デメリット
インフレとは何か?そのメリット・デメリット
インフレとはインフレーションの略で「物価が継続して上がり続ける状態」を言います(SMBC日興証券より)。
物価が上がり続けるということは裏を返せば、お金の価値が下がり続ける。
例えば、1か月前までは100円だったバナナが今月は110円になっているとすると、バナナの価値が10円上がった、またはお金の価値が10円下がったという状況。
つまり物がお金よりも価値がある状態といえるでしょう。
インフレ:物>お金
インフレには2種類ある
インフレには、需要牽引型インフレと供給不足型インフレの2種類があります。
一般的に需要牽引型インフレはよいインフレといわれ、供給不足型インフレは悪いインフレと言われています。
需要牽引型インフレとは
需要牽引型のインフレとは、まさに私たちの需要が物の価格を押し上げるインフレのことです。
一つ100円のバナナ10本あり、お客さん10人が100円で買っていきました。
次の日もバナナが10本売られていましたが、お客さんが15人来ています。
その場合、売り主の合理的な判断としてバナナの値段は、例えば110円になりますよね。
そして次の日は、バナナの数が15本になりましたが、お客さんが20人来ました。
そこでまた合理的に、価格が120円になる。
というように、バナナの値段が需要によって上がっていくことが、需要牽引型またはデマンドプッシュ型インフレといいます。
供給不足型インフレとは
供給不足型インフレとは、需要に対して供給が追い付かないために価格が高騰するインフレです。
一番身近な例として2020年に起きたマスク不足ですね。
国民すべてがマスクを必要としていたにも関わらず、国内の供給能力が追い付かなくなったためにマスク価格が高騰しました。
これが、供給不足型インフレですね。
そしてこの供給力不足が限界を超えたときに起きるのが、ハイパーインフレといわれる現象です。
ハイパーインフレーションの定義は「インフレ率が毎月50%を超える現象」または「3年間で累積100%の物価上昇」と言われています。
ここで誤解するべきではないのが、お金の量を増やすことがすなわちハイパーインフレにはつながらないということです。
お金の量がいくら増えても(マネタリーベース)、それが市中に出回らなければ(マネーストック)極端な話インフレにはなりません。
また、例えば1000兆円が市中にあったとしてもそれが、どこかの金庫に眠っていればそのお金はないものと同じです。
つまりインフレは、お金が使われて初めて起きる現象であり、お金の総量がインフレを起こすのではないのです。
インフレのメリット・デメリット
インフレには、需要牽引型と供給不足型があるのがわかりました。
そこでこの二つのタイプのインフレには、どんなメリットとデメリットがあるのかをまとめてみましょう。
需要牽引型インフレのメリット・デメリットとは
需要牽引型インフレのメリットの第一は、雇用が安定することでしょう。
人々の需要に応えるために、企業が事業を拡大するので雇用も拡大し安定することで、さらに需要の安定につながっていきます。
また需要牽引型インフレによる雇用の拡大は、賃金も上昇も当然伴っていきます。
雇用の拡大によって企業がより多くの人材を必要とすることになるため、従業員により良い条件を提示することで人材を集めようとするのです。
インフレ時は需要に応じて物価が上がりますが、相対的に通貨の価値が減少します。
そのため、お金を現金で持つよりも不動産や株、金など、リターンが期待できる物への投資が活発になりますね。
以下に需要牽引型のメリットとデメリットを、簡単にまとめてみました。
預金、つまりお金の価値以外はすべてが上昇するのが需要牽引型のインフレになります。
供給不足型インフレのメリット・デメリットとは
ではもう一つのインフレ、供給不足型インフレのメリット・デメリットは何でしょうか。
供給不足型インフレにメリットはあまりないですね。
というのも、供給不足型インフレは国内で必要なものを賄うことができないということ。
つまり、国内の生産能力のもとになる雇用が安定していないといえるでしょう。
雇用が安定しなければ、賃金も安定しないため供給不足による物価の上昇に対応できなくなるのは当然ですよね。
以下に供給不足型インフレのメリットとデメリットをまとめてみましたので、ご覧ください。
需要牽引型と違って、下落する項目が多いのが供給不足型インフレの特徴です。
デフレとは何か?そのメリットデメリット
デフレとは一般的に、物価が継続的に下落していく現象のことを言います。
そして物の価値が下がるということは、その反対にお金の価値が下がっていくということになりますね(SMBC日興証券より)。
例えば極端な話、昨日1本100円だったバナナが今日は99円、明日が98円、明後日は…というように継続的に物の値段が下がっていく現象です。
反対にお金の側からみると、支払うお金の額が一日ごとに減っていますよね。
つまり、お金の価値が上がっていくのがデフレということになります。
デフレ:物<お金
バナナの例えでいうと、1本100円のバナナが10本売ってあり、お客さんも10人いるのですが、100円は高いから買えないといわれている。
そこで、99円に値下げしてやっと1本売れる状況。
次の日は、99円でも売れなくて98円で….という状況ですね。
デフレになると何が起きる?
デフレは物価が下がってしかもお金の価値が上がっていくので、なんとなくとてもいい現象に見に見えますよね。
しかし、実際は生活や社会を破壊する怖い現象なのです。
物価が下がるとどうなるかというと、その分売り上げが下がりますよね。
売上が下がると当然利益も薄くなり、その分どこかを削らなければいけなくなります。
その時に減らされる対象になりやすいのが給料なんですが、給料が減るとさらに人がものを買わなくなる。
人がものを買わなくなるとさらに物価が下がる、という悪循環を繰り返すようになっていくのです。
デフレが起きる原因
デフレが起きる原因は簡単に言うと、総需要が不足することが原因ですが、それって何があるでしょうか?
例えば、リーマンショックなど世界経済に影響を与えるような問題が起きると、私たちは先行きの不透明感から消費を控えるようになります。
つまりここで総需要の不足が起きるわけですね。
しかし、デフレの発生に原因について、経済学者でもトンチンカンなことを言い出す人がいるので、注意が必要です。
特に「デフレの原因は貨幣量の減少」と言っている人の意見は、慎重に聞いたほうがいいでしょう。
先にも書いたように、貨幣の価値が上がる原因は物の価値が相対的に減少するからです。
中には「通貨当局が貨幣量を減らすことで貨幣の価値が上がる」ことがデフレの原因なんていう、ことを言う経済の専門家と言われてい人もいます。
通貨当局が通貨の量を減らす場合
ではなぜ、通貨当局が通貨の量を減らす必要があるのかを考えてみましょう。
通貨当局が通貨量を減らすことがあり得る状態で一番考えられるのが、景気が過熱しすぎた場合です。
つまり、需要と供給能力のギャップ、つまり需給ギャップが大きくなりすぎることで、物価が上が上がり、相対的にお金の価値が下がる。
別の言葉でいうと、需要に対しての供給能力が追い付かなくなる。
その場合、通貨当局は金利の引き上げなどの金融政策をとることで、通貨量を減らし景気を適切な状態にします。
しかし、なんの脈絡もなく利上げなどの金融引き締めを行えば、確かにデフレには突入しますので、普通の常識があれば、意味のない金融引き締めは行いません。
デフレのメリット・デメリット
ではデフレのメリット、そしてデメリットは何でしょうか?
デフレとは物の価値が下落し、相対的にお金の価値が上昇することですが、その状況をメリットとして享受できるのは、お金を持っている人たちだけですね。
ただお金を持っているだけではなく、半端ないお金を持っている上位数%の人たちのみです。
つまりお金を多く持っていればもっているほど、デフレによってお金の価値が上昇し資産が増えていき、それを運用することでますます資産を増やしていく。
しかし、お金以外の資産は価値が下がり続けるのでお金を持っていなければ、さらに貧しくなっていき、お金がないので資産運用をすることもできない。
まさにフランスの経済学者、トマ・ピケティが「21世紀の資本」の中で指摘した「資産運用によって得られる富は、労働によって得られる富よりも成長が早い」という状態ですね。
デフレのメリットとデメリットをまとめてみました。
銀行預金や現金以外のすべてが下落するのがデフレです。
この時に現金や銀行預金という資産を持っていればいいのですが、そうでない場合は貧困に真っ逆さまということになります。
インフレ・デフレまとめ
インフレには需要牽引型と供給不足型の二種類があります。
需要牽引型の場合、雇用環境や賃金が上昇するのですが、供給不足型のインフレの場合は必ずしも賃金や雇用がよくなるわけではないです。
そしてデフレは、お金の価値以外はすべてが下落していく現象ですので、お金持ちはますます金持ちに、そして貧乏人はますます貧乏人になっていく世界。
インフレとデフレでは、様々な環境がどう変わるのかをまとめてみたのが下記の表になります。
そこで問われるのが、私たちはどのような経済環境の中で生きていきたいのかということですね。
個人的には、需要牽引型のインフレの世界に生きていきたいと思いますが、その世界を実現するのは、実はそれほど難しいことではないと思います。
カギとなる存在は、政府の働きではないでしょうか。
主権国家である日本の政府が、適切な政策をとることで私たちは需要牽引型のインフレを作り出すことができるのです。
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