経済政策で人は死ぬか?の答えは?書評

書評
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「経済政策で人は死ぬか?」なんてあまり考えたことがなかったのですが、コロナの影響で当事者に立たされることで、否応なしに考えなければならない状況になってしまいました。

実際のところ、世の中が不況に陥ってしまいそこから脱出するために世界各国がどのようにあがき、脱出することができたのかという研究が実はしっかりとされていたんですね。

その研究成果を分かりやすいようにまとめたのが「経済政策で人は死ぬか?:公衆衛生学から見た不況対策」という本です。

1929年の世界大恐慌時のアメリカ、ソ連崩壊時のロシア、アジア金融危機やリーマンショックなどの世界的不況に対する各国政府の対応によって、国民の公衆衛生にどのような影響があったのかを研究したものです。

この本の中で特筆するべきは以下の3点

  1. 不況時の緊縮財政は人を殺す
  2. イデオロギーや信念に基づいた政治は人を殺す
  3. 民主主義はデータや証拠が開示されることで成り立つ

不況時の緊縮財政は人を殺す

「不況時の緊縮財政は人を殺す」は様々な研究結果からみちびかだされていますが、この本にはその研究結果が数多く盛り込まれています。

例えば、アジア通貨危機の際にアジア諸国がとった行動は対照的で、IMFの助言に従い緊縮財政を取り入れ社会保障費を削ったタイや韓国インドネシアの貧困率は上昇。

しかし、IMFの助言を受け入れず社会保障費を増やしたマレーシアの貧困率は、それほど上昇しなかったことが分かったのです。

同じように、不況時に緊縮財政をとらず逆にニューデール政策によって財政出動を行うことでアメリカ国民の命が救われた事実。

またサブプライムローンによる金融危機によって、未曽有の大不況に見舞われたアイスランドでしたが、緊縮財政を受け入れずに国民の社会保障を充実さらには拡大させることで、国民の公衆衛生を維持。

危機から4年後には3%の経済成長をするまでに回復したのです。

不況時に緊縮政策によって社会保障を削った国々の国民は、貧困率の上昇、病死や自殺が増加など国民生活の危機に陥ることは明白といっていいでしょう。

イデオロギーや信念に基づいた政治は人を殺す

現実を直視するのか、理論を現実に当てはめるのか?

1929年の世界大恐慌でも、自助努力が必要だとするフーバーと、政府による社会保護政策拡充を公約に掲げたルーズベルト。

ソ連崩壊時に行われた国営企業の急激な民営化を先導主張したのミルトン・フリードマンに代表される経済学者でした。

急激な改革ではなく、漸進的な民営化を提唱した学者もいるにはいたのですが、ロシアがIMFからの融資を受け入れることが決まった時点で受け入れさせられたといっていいでしょう。

問題は、危機が起きたときに行われる社会保障の削減や、民営化による公共事業の削減は危機の克服には少しも益がないばかりか、逆に国民を死に追いやる政策だということです。

それが歴史によって証明されていながら、不況の際に緊縮財政を行おうとするということは、歴史から学ぶ能力がない、まあは緊縮財政至上主義の教条主義者であるか、または緊縮によって利益を享受できる立場にあるとしか思えないのです。

この経済危機には民営化の促進と、自己責任の追及という教条主義はいまだに世界にはびこっています。

それによって、歴史に見られる正しい政策への評価や研究結果という現実の世界の出来事は、経済政策においてはなぜか無視される傾向にあるのです。

民主主義はデータや証拠が開示されることで成り立つ

不況時に緊縮財政を行うか、または積極財政を行うかはこれまでの歴史を見る限り、多くの場合政治家の政治判断によって決断された。

国民が得ることができる情報の範囲が限定されていたことや、教条主義に取りつかれた政治家、経済学者によって過去の事例を顧みることなく、理論を現実に当てはめたために国民の不幸が増した例は数多い。

しか、特にギリシャでは粉飾決算の隠蔽や、緊縮財政の国民への影響を隠蔽など、国民が正しい情報を得ることができなくなることによって、経済政策の判断に狂いが生じた点は大きい。

基本的にユーロを通貨とするギリシャは、主権通貨を持たないので金融危機に対する手段は限られていたのですが、それにしても国民への情報をが開示されないことによる影響をもろに受けてしまいました。

他の多くの国々でも、不況時に緊縮政策を行うことでこれまで多くの人々が殺されてきたことがしっかりと国民間で検証されていないために、教条主義にとらわれた政治家や経済学者の言説を妄信してしまう傾向があったでしょう。

まとめ

結局のところ、経済政策の誤りは国民全体に正しい政策を行う裏付けとなるデータや証拠などが共有されいないことが原因だったのではないでしょうか。

正しい知識とデータが共有されることによって、教条主義的な政治家や経済学者でさえもその暴走を止めることが可能になるということでしょう。

この本はでは不況時の経済対策について、以下の三の点を挙げて結んでいます。

  • 有害な政策はとらない
  • 人々を職場に戻す
  • 公衆衛生への投資

つまりは痛みを伴う、改革などというスローガンに騙されることなく、国民が淡々と仕事ができる環境を整え、社会保障を充実させることで国民が安心して生きていくことができる国家設計行うっことが政治家の責務であります。

同時に国民もまた、そのような国民が安心して生きることができる社会を作ることができるよう、政治に関心を持つべきなのでしょう。

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