民主主義によって独裁的な政権が生まれる過程で起きる対立勢力の消滅

経済
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独裁と民主主義、どちらを選ぶかと言われれば、自分は迷わず民主主義を選ぶでしょう。

しかし、すべての国々が目指すべき政治体制と考えられている民主主義が、実は知らない間に独裁政治へとすり替えられていく危うさ。

そして脆さを内包した政治体制だ、ということはあまり理解されていません。

この記事では、

  1. 民主主義は危険なのか?
  2. 経済でも起きた対立軸の消滅
  3. 独裁的な政治の台頭

について、中野剛志氏の著書「保守とは何だろうか (NHK出版新書)」を参考に書いてみようと思います。

民主的な独裁勢力の台頭

民主主義が独裁政治へと落ちるかもしれない危険な時、それは対立する意見が存在しない時と考えられます。

対立する勢力がおらず、多数派が意見を占める集団においては民主的に多数派が採用されたにも関わらず、結果的に独裁的な運営が行われてしまう。

中野剛志氏の「保守とは何だろうか」にはイギリスの国体を例に、異なる権力同士がけん制しあい均衡を保つことで、健全な社会秩序を維持してきたと書かれています。

そしてこれを日本の例に当てはめてみると、興味深い事実が見えてきます。

日本においての選挙制度は中選挙区制が採用されており、中選挙区の中で同じ党の候補同士がしのぎを削って選挙活動を展開する中で、政治家としての資質が磨き上げられたのです。

そして例えば自民党内では、中選挙区制によって活発化した派閥が常に主流派の監視役としての機能をはたしていました。

しかし選挙制度改改革により小選挙区制に改革されたことで、これまで保たれていた政治的なバランス大きく一極にぶれるようになった。

つまり、あまりにも多くの議席を持つ自民党と、弱小野党という構図ですね。

そして自民党内には、主流派を監視できる反主流派がいない。

まさに民主制によって生み出された、独裁的な政治体制と言っても過言ではないでしょう。

経済でも起きた対立軸の消滅

経済においても、これまでは小数の富裕層と分厚い中流層によって経済的バランスが保たれていました。

しかし戦後から一貫して続く緊縮財政と構造改革規制緩和によって日本の経済的なバランスは大きく棄損され続け、過去10数年間で完膚なきまでに破壊されたと言っていいでしょう。

その経済的なバランスがどう変化したかというと、多くの富を持つ少数派と富を持たない多数派に大きく分類されているのです。

そして、これまでは大量にいた中流層が減少したことで、中流層向けの政策が無くなった。

しかし、政策の軸が貧困層に向け有られることは無かったのです。

なぜならば、為政者が貧困層というものを理解できていなかったからというのが一番の理由でしょう(The Road to Somewhere: The New Tribes Shaping British Politics)。

為政者そのものが小数の富裕層の代表で会ったため、自然に富裕層に向け経済政策だ採用されていき、富める者はますます富、貧しいものはますます貧しくなる。

そしてこれは戦後の日本で行われた民主主義の帰結であることは疑いようがないでしょう。

独裁的な政治の台頭

平成の最後に生み出された、一極に集中し少数派のために行われる独裁的な政治が生み出された背景。

それはまさに、民主主義に基づいて「国民が望むことで作り上げられた政治」と言えるでしょう。

構造改革や規制緩和の背景にあったのは妬みという国民感情であり、それに任せた結果、日本国民は一部の超富裕層を除いて、等しく平等に貧しくなりました。

また、決められない政治からトップダウンで決めるスピーディーな政治への改革は、国民が政治について考えることの放棄であったと言えるでしょう。

中間層の無い(等しく貧しい)平等な国民と権力が集中した為政者の組み合わせがによって起きたのは、完全な民主主義政治ではなく、フランス革命に見られるような、ジャコバン派の恐怖政治とナポレオンによる独裁政治だった(中野剛志)ことは覚えておくべきでしょう。

まとめ

この記事では、

  1. 民主主義は危険なのか?
  2. 経済でも起きた対立軸の消滅
  3. 独裁的な政治の台頭

について書いてきました。

結局のところ、対立軸の無い集団において民主主義は成立しないということです。

中選挙区制度の自民党や、小数の富裕層と分厚い中間層のような対立が無い限り、民主的に選ばれた独裁的な政治が続くのです。

選挙制度においては、中選挙区制度の復活が望ましいと考えますが、そうでなくとも自民党の対立軸になりうる政党の成長。

そして、国民対政治という対立軸を作ることによって、政治経済のコントロールを行うことが現時点では必要ではないかと考えるのです。

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