最近話題のMMT(現代貨幣理論)、日本国民の間で理解が深まることで日本が約20年間苦しむデフレから脱却することができるのではないかと思います。
そこでこの記事では、
- MMTの基本
- インフレとは何か?
- MMTとインフレの関係
について書いていきます。
MMTの基本理論
MMTを実際に行うとインフレが抑えられなくなるとか、ハイパーインフレになってしまうとかインフレについていろいろ意見が出ていますが、実際のところどうなんでしょうか。
そこでまずMMTの基本理論をおさらいしてみましょう。
MMTの基本理論は三つ。
- 自国通貨を持つ政府は、財政的な予算制約に直面することはない。
- 全ての経済(および政府は)、生産と需要について実物的あるいは環境的な限界がある。
- 政府の赤字は、その他の経済主体の黒字。
これだけ理解すれば、MMTの大半は分かったようなものです。
自国通貨を持つ政府に予算制約はない
日本のような自国通貨を持つ政府はお金がないから河川整備ができないとか、お金がないから病院の余剰ベッドを削減するなんて必要がないということです。
理論上、必要な所に必要なだけ予算を使うことができるのです。
河川整備に10兆円、老朽化した水道管の整備に10兆円、電線の地下化に10兆円などなど、必要な所には取捨選択することなく予算を付けることが可能です。
MMTを批判する輩は、この面だけをとらえてMMTを実際に行えばインフレになると騒いでいるわけですが、第2番目の基本理論みて下さい。
生産と需要において物質的、環境的な限界がある
つまり予算を付けることはできるが、供給能力の限界を超えれば悪性のインフレが発生するとうことです。
例えば、10兆円使えば日本の河川すべてを整備することができるとしましょう。
つまり河川整備に10兆円分の需要があるということですね。
しかし整備業者の不足により、河川整備は1年間に1兆円分しか供給できないとしましょう。
そこを無視して、1年間で10兆円を使ってしまうとどうなるか、河川整備の供給能力は整備需要にはるかに届かない。
つまり、供給に対して需要が大きすぎるので悪性のインフレが発生してしまいます。
そのため、政府は需要が供給能力の限界を超えないよう、つまり悪性のインフレが発生しないように、マイルドなインフレに抑えるための予算執行が求められるわけです。
政府の赤字はその他の経済主体の黒字
現代貨幣論によると「国内政府収支+国内民間収支+海外収支=0」になります。
つまりこの三つすべてを黒字にすることは、絶対に不可能であり必ずどれかが赤字にならなければならないということです。
その状況を端的に表しているのが、以下のグラフです。
このブラフによると、政府支出が最も多かった2009年が民間の黒字が最も大きくなっています。
日本の一般政府・民間・海外の収支(対GDP比%、2018年以降は見込み)
つまり政府の赤字のおかげで、民間の黒字が増えたとのです。
反対に、政府の支出が最も少ない2017年には民間の黒字も少なくなっています。
つまり政府が赤字を増やすことによって、民間の収支が黒字になることが一目で分かりますよね。
インフレとは何か
MMTとインフレの関係を理解するには、MMTの基本理論を理解するとともに、インフレとは何かを理解する必要があります。
と言ってもそんなに難しいことではなく、要は需要と供給のバランスを表す言葉です。
供給が需要に追い付かない
インフレ(インフレーション)とは、需要が供給を上回っている状態を言います。
つまりこうですね。
需要>供給
国民が商品やサービスを欲しているのにその商品やサービスの提供が追い付かない状態をインフレーション、略してインフレと言います。
インフレの場合、市場原理として需要が高いものから物価は上がって行きますね。
金融的にインフレを表現すると、お金の価値が下がっている状態なので、現金を持っているよりも投資や投機に資金が流れやすい状態です。
インフレとは需要が供給を引っ張るので、企業の設備投資が活発化しそれによって労働者の賃金も上がって行くことになります。
デフレって何?
デフレとはインフレの反対で、供給が需要を上回っている状態を言います。
不等式で書くと、
需要<供給
国民に商品やサービスの需要が少ないため、商品やサービスが余ってしまう状態を言います。
つまり物やサービスが買いたたかれるので、物価が下落しますよね。
安くしても売れない状態が続くので、企業は余計な経費を削減していき従業員の給与も下がっていくというデフレの悪循環が続くことになります。
またデフレを金融的に表現すると、お金の価値が上がっている状態。
つまり、現金でお金を持っていた方が資産が増えていくので市場にお金が出回らなくなっていきます。
MMTとインフレの関係とは?
MMTとインフレの関係を説明するには主流派経済学と、MMTの基になったケインズ経済学がインフレをどう見ているかの違いから理解する必要があります。
では、インフレに対する主流派経済学とケインズ系の経済学の見方が、どう違うのかを見てみましょう。
インフレに対する見方の違い
インフレに対する主流派経済学とケインズ系経済学の見方の違いは下記の表、財政政策に表されています。
つまり、主流派経済学にとって「財政出動を行うとインフレが制御できなくなるので絶対に反対という立場です。
反対にケインズ系経済学は「インフレ率が許容する範囲でなら財政出動することができる」としています。
全く正反対の考え方ですね。
しかし普通に考えて、インフレとデフレのどちらが国民がより豊かになれるでしょうか。
デフレの場合供給力が勝っているので、労働力を含めすべての商品価値が下がります。
するとお給料がますます減ってい行きます。
反対にインフレはというと、需要が勝っているので労働力を含めたすべての商品価値が上がって行きます。
つまりお給料がどんどん上がって行くわけですね。
鍵はインフレ率
ここで「インフレ率」というキーワードがでてきました。
主流派経済学者はインフレ率の制御ができなくなるので財政出動には反対。
ケインズ系経済学者は、インフレ率が許す限り財政出動を行うべきという立場。
まず、主流派経済学者の「インフレ率が制御できなくなるという意味」とは、いったいどういう意味なんでしょうか。
はっきりいて意味不明です。
下のグラフは、主要国のインフレ率をまとめたものですが、2001年頃からズーっとマイナス。
2014年に少し上がってますが、消費税増税分が上がったためでそれ以外は全然ダメですね。
主要国のインフレ率(GDPデフレータベース)の推移(対前年比%)
ではこのグラフを見てみましょう。
2001年からの自国通貨建て、主要先進国の政府支出ですが、他の国々は多少なりとも伸びているのに対して、日本の伸びは異常なくらい低い。
財政支出がなされていないので、日本のインフレ率はマイナスになっていますよね。
反対に、政府支出を伸ばしているイギリスは、約2%のインフレを保っているのが分かると思います。
つまりインフレ率は財政出動を抑えれば制御できると同時に、適切な財政出動をすることで約2%程度の適切なインフレ率を保つことができるのです。
まとめ
この記事では、
- MMTの基本
- インフレとは何か?
- MMTとインフレの関係
について書いてきました。
結局のところ、国民はデフレ下では豊かになれないということを過去20年間の社会実験で日本国は証明しました。
経済というのは不確実で予測不可能な代物であるからこそ、政府(=国民)が経済の主導権を握っていかなければならないのです。
そして国民が豊かになれる約2%のマイルドなインフレを達成するには、継続的な政府の財政支出が必要ということが理解いただけたのではないかと思います。
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