話題の現代貨幣理論ですが、日銀や政府はこれを行うとインフレが制御不可能になると言っているのですが本当なのでしょうか?
そもそも現代貨幣理論を行うとインフレになるのでしょうか、また経済への影響はどうなるのでしょうか?
本記事では、現代貨幣理論とインフレの関係について以下のようにまとめてみました。
- 現代貨幣理論にはインフレの壁がある
- インフレは制御できる(日本の例)
- 日本に必要なのは適当なインフレ率の向上
これらについて順をおって説明していきますね。
現代貨幣理論(MMT) とインフレの関係性
現代貨幣理論とインフレの関係について書く前に、まず現代貨幣理論とは何なのかについてそのポイントを書いてみたいと思います。
現代貨幣理論を理解するための三つのポイント
現代貨幣理論を理解するために必要なポイントは実はたったの三つしかないのです。
- 自国通貨を持つ政府は、財政的な予算制約に直面することはない。
- 全ての経済(および政府は)、生産と需要について実物的あるいは環境的な限界がある。
- 政府の赤字は、その他の経済主体の黒字。
現代貨幣理論は上記三つのポイントに要約されるのですが、簡単にどういう意味なのか解説してみましょう。
自国通貨を持つ政府に財政的な予算制約はない
つまり日本のように、自国通貨を持つ政府は理論的には無限に予算を国の事業に使うことができるという理論ですね。
つまり、建設国債でも教育国債でも予算が必要な分野に予算をつぎ込むことができるのです。
しかし、現代貨幣理論反対派はこの点に的を絞って無限に予算をつぎ込めば高インフレになると反対しているのです。
確かに何の制約もなく無限に予算を執行すれば悪性のインフレになるので、反対派の言っていることは正しいのですが、反対派は故意にまたは無知がゆえに、現代貨幣理論(MMT)の2番目のポイントを見逃しています。
供給と需要においての物質的あるいは環境的な限界がある
これはどういう意味かというと「供給をはるかに超える予算執行はできない」という意味なんです。
例えば、日本のインフラ整備供給能力が年間10兆円規模としてそこに100兆円もの需要を作る予算(例:インフラ整備等)を一年間で付けてしまうと、90兆円分の供給不足が発生し、悪性のインフレが起きることは確実です。
しかし、予算を年間10.5兆円づつ配分していけばインフレを緩やかに抑えることができるのです。
つまり、現代貨幣理論は人がお金の動きをコントロールするための理論といえるでしょう。
政府の赤字は、そのほかの経済の黒字
バランスシートの考えかたとして借り方と貸方は同じになるはずですが、国の財政についても同じことが言えます。
つまり、政府が赤字を拡大することで民間の黒字が増大し、逆に政府が赤字を縮小すると民間の黒字も縮小します。
ということは、政府が行っているプライマリーバランスの黒字化を本気で実行すると、民間の資産はすべて消失してしまうということになりますね。
プライマリーバランスの黒字化というのは、本来GDPに対して経済成長をする事ができれば簡単に黒字化を達成することができるのです。
インフレは制御できる(実例は日本)
現代貨幣理論を実行すると高インフレになるというのが主流派経済学者や評論家の批判ですが、実際にはそうなりません。
現代貨幣理論を実際に実行しても、高インフレにならないという実例が日本で証明されています。
マネタリーベースを増やしてもインフレにならない?
日銀は2013年頃から国債を買い取りマネタリーベースを増やし続けています。
マネタリーベースの主な内容は日銀当座預金になりますが、これだけ当座預金を増やし続けているにも関わらず、日本はインフレになっていません。
その理由は消費税を増税し需要を抑え、緊縮財政で投資を縮小させる政策をとってしまっているからです。
つまり、いくら政府が国債を発行し日銀が買い取って日銀当座預金を増やしても、政府が需要抑制政策をとればインフレはコントロールできることを見事に証明しています。
つまり現代貨幣理論を実行すれば高インフレになるという、指摘は間違いだということが分かります。
日本に必要なのは適切なインフレ率の維持
今の日本はデフレでありそこから脱却するためには、インフレにする必要があります。
デフレ脱却に必要なのはインフレ率を上げ維持すること
デフレとは、何かというと需要が供給よりも小さい状態、つまり需要<供給ですね。
反対にインフレとは、需要が供給よりも大きい状態、つまり需要>供給のような状態を言います。
つまりデフレから脱却するには政府が長期的な需要を維持し、供給が需要を追いかける形にもっていかなければなりません。
日本における適切なインフレ率はコアコアCPI(食料、エネルギーを除いた物価指数)2%が適切なインフレ率といわれています。
つまりインフレ率を2%代に維持できれば、デフレ脱却は容易に果たすことができる訳です。
インフレはコントロール可能
しかし主流派経済学者によるとインフレは制御不可能だそうですが、実際に日本では緊縮財政による需要縮小政策をとることで、結果的にインフレの制御に成功していることは間違いないのです。
現代貨幣理論とは、インフレは人為的に起こすことができ人為的に鎮めることができるという事実を述べた理論なのです。
主流派経済学的には受け入れられない理論のようです。
しかし今、日本の政治に食い込んでいる主流派経済学派のリフレ派は、インフレを起こすためにマネタリーベースを増加させたのだが、それがインフレはダメと言っているのは「ちょっと何言っているか分かんない」(サンドイッチマン風に)状態です。
主流派経済学が最も忌避するものは「インフレ」でありそれは市場への政治介入が行われることで、インフレになると主張し極力市場への政治介入を排除し市場そのものに経済の流れを任せてしまうのが主流は経済学です。
経済は人為的に運営するべきもの
しかし、市場のみに経済を委ねることで起きたのはデフレでありそれによって国民の貧困化と民主主義の破壊、国の分断などが起きました。
主流は経済学が描く経済には国民から選ばれた政治家の介入する余地はなく、資本力、つまり金の力で物事が決められる超不平等な社会が存在するのみです。
しかし現実を見ればそこには生身の人間がいて、共同体の中で生きている。
その共同体を守り国民を守るために、国民から選ばれた政治家主導で経済政策を作っていかなければいけないし、その理論的支柱となるのが現代貨幣理論になると考えるのです。
まとめ
この記事では、
- 現代貨幣理論(MMT) とインフレの関係性
- 日本が行ったように、インフレの制御は可能
- 日本に必要なのは適切なインフレ率の維持
という三つのポイントに沿って書いてみました。
「MMTを行えば日本は、はいぱーいんふれーしょーん」としか反論のしようがない主流派経済学者たちをしり目にMMTは世界中でどんどん広まってきています。
そのうちにMMTを批判していた学者たちも「そんなことは知っていた、昔から提唱していた」と発言を変えてくるでしょう。
そうなる日が来るまで、そして日本が緊縮財政から脱却するまでをぜひ見届けたいと思っています。
コメント